フェニルケトン尿症(PKU )とは

フェニルケトン尿症(PKU)は、生まれつき体内でフェニルアラニンというアミノ酸(タンパク質を作る成分の一つ)をうまく分解できないために、血液中にこの物質が蓄積してしまう病気です。
フェニルアラニンが体に溜まりすぎると脳に有害で、治療せず放置すると重い症状を引き起こす可能性があります。そのため新生児期からの対策が重要で、先天性の代謝異常症の一つであるこの病気は、新生児マススクリーニング(生後数日以内に行う代謝異常の血液検査)の対象となっており、生まれてすぐに発見することができます。
新生児マススクリーニングによってPKUと診断された場合、できるだけ早く食事療法などの治療を開始することで、発症を未然に防ぐことが可能です。
原因
この病気が起こる直接の原因は、フェニルアラニンを別の物質(チロシン)に変えるための酵素が生まれつきうまく働かない(欠損している)ことです。本来この酵素がフェニルアラニンを処理してくれるのですが、酵素を作るための遺伝子に先天的な変異があると酵素が十分に機能せず、フェニルアラニンが分解されません。この遺伝子の変異は親から子どもに受け継がれることで起こります。フェニルケトン尿症ではお父さんとお母さんの双方が原因遺伝子の保因者であり、子どもが両親からその変異を二つ受け継いだときに初めて発症します。両親がそろって保因者である場合、理論上は25%(4人に1人)の確率で子どもにこの病気が現れるとされています。
主な症状
フェニルケトン尿症の赤ちゃんは、生まれてすぐの新生児期にはほとんど症状がありません。しかし治療を受けずに通常のミルクや食事で生活していくと、生後数か月から1年ほどで次第に症状が現れてきます。主な症状としては次のようなものがあります。
発達の遅れ : 成長につれて首がすわらない、言葉を話さないなど精神・運動の発達が遅れ、進行すると重度の知的障害に至ります。
けいれん発作 : 脳への障害によりひきつけ(てんかん発作)を起こすことがあります。
皮膚や髪の色の変化 : 肌に湿疹が出たり、メラニン不足により皮膚や髪の毛の色素が薄くなることがあります。
体臭の異常 : フェニルアラニンが過剰になる影響で、尿や汗がネズミの巣やカビのような独特のにおいになる場合があります。
成人患者の精神症状 : 不安・うつ・集中困難などが生じる可能性があります。
酸化ストレスの関与 : フェニルケトン体が正常代謝を阻害する機序
妊娠時のリスク : 母体の高フェニルアラニン血症が胎児に先天異常を引き起こす可能性があります。