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40代・50代の妊娠と年齢の影響 ー 染色体異常との関係 ー

2025年12月25日
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40代・50代の妊娠と年齢の影響 ー 染色体異常との関係 ー

近年、ライフスタイルや価値観の変化により、40代・50代で妊娠を希望されるご夫婦が増えています。
一方で、「年齢的に難しいのでは」「染色体異常のリスクが高いと聞いて不安」といった声も多く聞かれます。
本ページでは、高齢妊娠における年齢の影響や、染色体異常との関係について、分かりやすくご説明します。


高齢妊娠とは

一般的に、35歳以上での妊娠は「高齢妊娠」と呼ばれます。
40代・50代になると、妊娠や出産に関わる身体の変化が、より顕著になりやすくなります。
これは特別なことではなく、年齢を重ねることで誰にでも起こる自然な変化です。


年齢と妊娠の関係

年齢が上がるにつれて、妊娠しにくくなる傾向があることは広く知られています。
その背景には、以下のような要因があります。

・卵子の数や質の変化
・ホルモンバランスの変化
・排卵のリズムが安定しにくくなること

これらは個人差が大きく、同じ年齢でも状況はさまざまです。
そのため、「年齢だけ」で可能性を判断するのではなく、現在の身体の状態を知ることが重要になります。


染色体異常について

高齢妊娠において、不安の声が多いのが「染色体異常」です。
染色体異常とは、受精卵の染色体の数や構造に変化が生じる状態を指します。
年齢とともに、卵子が分裂する過程で染色体が正しく分配されにくくなることがあり、その結果、染色体異常を伴う妊娠が起こる可能性が高まると考えられています。


20代から35歳頃までは30%前後の割合であるものが、35歳を超えると割合が高まり、40歳では胚盤胞のうち60%近くが染色体数に異常があるとされています。
そして、44歳ではごくわずかの割合しか染色体正常な胚盤胞にならないということが示されています。


なぜ年齢が上がると染色体数に異常が出るのか

卵子の年齢=女性の年齢
卵子を生み出すもととなるのは、「原始卵胞」と呼ばれるものです。
この原始卵胞は、女性が母親のお腹の中にいるときにすでに作られており、
生まれてから新しく作られることはありません。
そのため、卵子の年齢は女性自身の年齢と同じになります。
原始卵胞の数は、年齢とともに次第に減少していきます。
・約600万個:胎児期
・約200万個:出生時
・約10万個:初経時

卵子が作られる過程(減数分裂)で異常が起きやすくなる
卵子や精子が作られる過程では、「減数分裂」という仕組みが働きます。
原始卵胞の中には、卵子のもととなる「卵母細胞」が存在しています。
この卵母細胞は、女性がまだ母親のお腹の中にいる段階で、減数分裂の途中で長期間停止した状態になります。
たとえば45歳の方の場合、約45年間にわたって分裂が途中で止まったままとなり、排卵のタイミングで再び分裂が再開されます。
このように長い休眠期間を経て分裂が再開されるため、本来は均等に分かれるはずの染色体が、うまく分配されないことがあります。その結果、染色体の数が多かったり少なかったりする卵子が生じ、染色体数の異常につながると考えられています。


精子と年齢の関係について
男性の場合、加齢によって精子の運動率が低下することはありますが、精子の形成過程では減数分裂が長期間中断されることがないため、男性の加齢が受精卵の染色体異常に直接関係することはないとされています。


胚盤胞のグレードと染色体異常について

「良好なグレードの胚盤胞まで育ったにもかかわらず、移植を繰り返しても妊娠に至らない」というご相談をいただくことがあります。
すべての原因が染色体異常によるものとは限りませんが、その一因として、染色体異常が関与している可能性が考えられる場合があります。

胚盤胞のグレードは、
・胚の発育の進み具合
・胎児になる部分(内部細胞塊)
・胎盤になる部分(栄養外胚葉)
といった形態的な特徴をもとに評価されます。
しかし、この評価で分かるのはあくまで外見上の状態であり、染色体の数や構造が正常かどうかまでは判断できません。そのため、見た目が良好な胚盤胞であっても、妊娠に至らない、あるいは着床が継続しない背景に、染色体異常が関与している可能性が含まれることがあります。


染色体異常と流産の関係

流産とは、妊娠22週未満に妊娠が継続できなくなることを指します。
胎盤が完成するのは妊娠15週頃までで、実際には多くの流産がその前に起こります。そして、流産の8割以上が染色体異常に関係していることが分かっています。
染色体異常がある場合、妊娠が成立しても継続が難しくなることがあります。
高齢妊娠では、妊娠初期に流産を経験される方が少なくありません。これは「治療がうまくいかなかった」という意味ではなく、身体が自然な選択を行った結果とも言われています。
ご自身やパートナーを責める必要はありません。


最後に

40代・50代での妊娠や不妊治療は、決して簡単な道のりではありません。
しかし、正しい知識を持ち、ご自身の状況を理解することで、選択肢は広がります。
ご夫婦それぞれの状況に寄り添いながら、最適な選択を一緒に考えていくことが大切です。

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