40代からの不妊治療 ― 諦めない選択と向き合い方

40代での妊活には、「もう遅いのではないか」「体力的に大丈夫だろうか」といった年齢ゆえの不安がつきものです。
若い頃に比べて妊娠の確率が下がることや、周囲からのプレッシャーを感じて焦ってしまうこともあるかもしれません。それでも、年齢だけで未来をあきらめる必要はありません。
実際、高齢での出産は成功事例も多く存在し、高齢だから不可能というわけではないとされています。
妊活において、「自分にはもう無理かも…」と不安になる時があるかもしれません。
不安と上手に付き合うためには、正しい情報を知ることも大切です。
自分の体の現状や可能性をきちんと把握することで、根拠のない噂や思い込みによる不安を和らげることができます。
また、リラックスする時間を持ったり、自分の趣味や好きなことで気分転換を図ったりすることも効果的です。
不妊治療のステップと選択肢
不妊治療は段階的に進めるのが 一般的で、体の状況や年齢に合わせて方法が選択されます。
• タイミング法(タイミング指導): 比較的初期に行われる方法です。
排卵のタイミングに合わせて夫婦 生活を持つよう医師が助言し、自然妊娠の可能性を高めます。
基礎体温を測ったり排卵検査薬を使っ たりしながら、まずは自然な形での妊娠を目指す段階です。
• 人工授精(AIH): タイミング法で結果が出ない場合に検討される次のステップです。
排卵日に合わせて精子を子宮に直接注入することで、受精のチャンスを高めます。
処置自体は短時間で終わり、体への負担も比較的軽い治療法と言えます。
• 体外受精(IVF)や顕微授精(ICSI): より高度な不妊治療の方法です。
女性から採卵し、体の外で精子と受精させてから受精卵を子宮に戻すのが体外受精です。
顕微授精は体外受精の一種で、精子を卵子に直接注入して受精させます。
これらは費用や体の負担も大きくなりますが、妊娠の可能性を高める有力な選択肢です。
ご自身のお身体の状況に合わせて、納得のいく計画を立て、ステップアップしていくことが大切です。
卵子と老化の関係

この図では、体外受精をして出産ができる確率を示しています。
不妊治療をしても出産できる確率は、年齢によってどうしても下がってきてしまい、40歳では8.1%、45歳では0.7%となっています。
年齢とともに低下していくのにはさまざま原因がありますが、卵子の老化が最も大きなものとなっています。
特に、年齢を重ねると卵子の染色体異常となる可能性が高くなります。卵子の染色体異常があると着床が出来なかったり、流産に繋がってしまうのです。そのため年齢が高くなるほどに、卵子も老化していき、妊娠・出産できる確率が下がっていってしまうのです。
なぜ年齢が上がると染色体数に異常が出るのでしょうか
卵子の年齢 = 女性の年齢
卵子を生み出すのは原始卵胞というものが必要となります。
女性が母親のお腹の中にいるときに、この原始卵胞は出来上がり、生まれてきてから新しく作られることはありません。
そのため、原始卵胞や卵子の年齢は女性自身の年齢ということになります。
そして原始卵胞の数は、年齢を重ねるごとにおおよそ下記のようにどんどんと減っていきます。
・600万個: 胎児の状態のとき
・200万個: 生まれたとき
・10万個: 生理が始まったとき
卵子が作られる過程(減数分裂)で異常が起きやすくなる
卵子や精子が作られる過程で染色体には減数分裂という仕組みがあります。
また、原始卵胞の中には、卵子を生み出す卵母細胞というものが存在しています。
この卵母細胞は、排卵までに卵子に育っていかないように、女性がまだ母親のお腹の中にいるときに、減数分裂の途中で長い間ストップされたままとなっています。
途中までは減数分裂をしていたもののですが、減数分裂を終えることなく中断している状態ともいえます。
例えば45歳の方では45年間もの間、ずっと途中で止まったままとなっていて、分裂が再開されることになります。こうした長い休眠期間があることから、分裂が再開されてもうまくいかなくなることは想像できます。
そして、中断している眠りから覚めて、減数分裂を行うときに本来は半分ずつに分かれるはずが、均等に分けることができないということが起こります。
減数分裂がうまくいかなかった卵子は、受精をしても染色体の数が一本多かったり、少なかったりします。
こうしたことによって、染色体数の異常が起こるのです。
これまで説明をしてきたように、染色体数の正常/異常には年齢がどうしても関わってきます。
年齢による染色体異常の状況など、これらのデータをまずは把握をしていただき、それぞれの方にとって合う妊娠までのプランを立てていけるようになると良いでしょう。