筋強直性ジストロフィーとは

成人において最も頻度の高い筋ジストロフィーの一種 であり、筋強直(手を握った後すぐに開けないなどの症状)や筋萎縮が特徴 です。しかし、影響を受けるのは骨格筋だけではなく、心臓や中枢神経、眼、内分泌系など 全身にわたる合併症を伴う疾患です。
この病気は常染色体優性遺伝であり、特徴的な遺伝現象として 「表現促進現象(親の世代より子の世代のほうが重症化しやすい)」 がみられます。軽症例では筋症状が目立たず、白内障や耐糖能異常(糖尿病傾向)などの合併症のみで発見されることもあります。また、出生時から筋力低下が顕著な 「先天型筋強直性ジストロフィー」 も存在します。
日本における患者数は 10,000人程度(10万人あたり約7人) と推定されており、成人発症の筋ジストロフィーの中では最も頻度の高い疾患です。しかし、平均寿命は約55歳とされ、ここ20年間大きな改善が見られていないのが現状です。
原因
筋強直性ジストロフィーは、特定の遺伝子における繰り返し配列の異常増加によって発症する遺伝性の疾患です。
この遺伝子異常により、RNAの処理や筋肉をはじめとした全身の細胞機能に障害が生じ、筋肉を構成するタンパク質の産生や働きが妨げられます。
その結果、筋肉が徐々に壊れていくとともに、以下のような多岐にわたる症状が現れます。
主な症状
【筋症状】
・筋強直現象(手を握った後、すぐに開けない)
・側頭筋・胸鎖乳突筋・四肢遠位筋の筋力低下や萎縮
【心疾患】
・心伝導障害、心筋障害(不整脈や心不全の原因となる)
【中枢神経症状】
・認知機能障害、性格変化、過度の眠気(傾眠)
【眼疾患】
・白内障、網膜変性症
【内分泌異常】
・耐糖能異常(糖尿病傾向)、高脂血症
【その他の特徴的な所見】
・西洋斧様の顔貌(顔の筋肉が痩せることで頬がこけたように見える)
・前頭部の脱毛(若年性脱毛のように見えることがある)