Dダイマー (D-Dimer)について
不妊治療や卵子提供の分野においても、Dダイマー検査は重要な役割を果たします。
不妊治療とDダイマー検査
不妊治療や卵子提供を受ける際には、体外受精(IVF)やホルモン治療などが行われますが、これらの治療に伴い血栓のリスクが高まることがあります。
特に、排卵誘発剤の使用やエストロゲンが関与する治療では、血液の凝固が促進される可能性があり、Dダイマーの値が上昇することが確認されています。
Dダイマーの役割とは?
不妊治療や卵子提供プログラムの一環として、Dダイマー検査が行われることがあります。
Dダイマーは血栓が形成された際にその分解産物として血中に現れます。
このため、血栓症のリスクを評価し、安全な治療を行うために重要です。
Dダイマー検査と妊娠初期の血液循環
Dダイマー値が高い場合、血栓ができやすい状態であることを示します。
特に、妊娠初期では、子宮周りの血液の循環が非常に重要です。
血液がスムーズに循環することで、胎児への酸素や栄養の供給が正常に行われます。
しかし、血栓が形成されると血流が阻害され、以下のようなリスクが生じる可能性があります。
- 流産のリスク
血栓ができることで、胚が無事に着床したとしても、その後の妊娠継続が難しくなり、流産に至る可能性があります。 - 早産のリスク
血栓が子宮周りの血流を阻害すると、胎児の成長や発育が妨げられ、早産につながる可能性もあります。
血栓症の早期発見と予防
血栓症は、治療中のお客様にとって重大なリスクとなり得ます。
Dダイマー検査によって、血栓形成の可能性を早期に察知することで、深刻な症状を防ぐための適切な処置が可能です。
また、血栓症のリスクを減らすために、水分を十分に摂取し、定期的な軽い運動を心がけることが重要です。
異常値が見られた場合
血栓症が疑われる場合は、さらなる検査や治療が必要になります。
例えば、抗凝固薬を使用して血栓の形成を防止することが一般的です。
当院では、ヘパリン注射を処方しております。
ヘパリン注射
ヘパリン注射は、血栓の予防や治療に広く使用される抗凝固薬です。
しかし、この注射剤は注射器と一体化しているため、台湾からの発送ができませんので、当院で購入いただき帰国時にお持ち帰りいただく必要があります。
日本国内でもこの注射剤の処方が困難な状況にありますが、日本での処方を希望される場合にはバックアップクリニックにご相談いただくことをお薦めします。
当院処方のお薬
Arixtra 2.5mg:1本 600台湾ドル
移植前に検査結果を確認する重要性
移植後の血栓予防にヘパリンを使用する予定がある場合、事前に検査を受け、Dダイマーの値を確認しておくことが重要です。
なお、当院では、Dダイマーの検査は3ヶ月前までの検査結果を参考にしておりますので、
移植周期での検査が難しい場合には、移植より3ヶ月前までに行っていただければ問題ありません。
Dダイマー検査の結果が移植前に判明していると、移植後の処方がスムーズに行えます。
特に血栓のリスクが高い場合は、移植後に早急な対応が必要となるため、検査結果を事前に確認することで、必要な処方や治療が遅延することなく進行します。
数値について
当院としては、以下の基準を設けており、当院の免疫專門の医師による判断を行っております。
通常(健康な成人)
正常範囲
約 0.5 µg/mL 以下(500 ng/mL)
健康な状態では、Dダイマーは非常に低い値を示します。
体外受精(移植前・移植後)
移植前
通常、Dダイマー値は 0.5 µg/mL 以下が推奨されます。
血栓リスクが高い場合は注意が必要です。
移植後
移植後、ホルモン療法や移植そのものによる影響でDダイマーがやや上昇することがありますが、異常に高い値(1 µg/mL以上)が見られる場合は、血栓症のリスクを疑う必要があります。
妊娠前
非妊娠時の正常範囲と同様、約 0.5 µg/mL 以下が一般的です。
妊娠中(妊娠初期から出産まで)
妊娠による血液凝固機能の変化により、Dダイマー値は妊娠初期から徐々に上昇します。妊娠初期では0.5〜1.5 µg/mL程度が一般的です。
妊娠後期
出産が近づくにつれてDダイマー値はさらに上昇し、3 µg/mL以上となることもありますが、血栓症のリスクを評価するためには医師の判断が必要です。
まとめ
不妊治療や卵子提供において、Dダイマー検査は安全な治療を行うために欠かせない検査の一つです。
治療を開始する前や治療中にDダイマーの値をチェックすることで、血栓症リスクを評価し、安心して治療を進めることができます。
不妊治療中にリスクを感じたら、早めに医師と相談し、必要な検査を受けることをおすすめします。